ブルガリアワインに続き、この記事でご紹介するのはルーマニアワイン。ブルガリア同様に、ルーマニアも長く共産主義体制下にあった国のため、ルーマニアワインが国際市場で注目を浴びるようになったのはここ最近のこと。まだまだ手に取りやすい価格で高品質なワインが楽しめると、今、世界から注目されている産地の一つです。
田村さん「ルーマニアワインはドイツやイギリス、オランダなどのヨーロッパの国々で主にデイリーワインとして楽しまれている人気ワインです。日本の輸入量も2016年から2019年にかけて倍に膨らんでいて、なかでも2018年から2019年にかけては1.3倍へと急増しています。」

前編に引き続きお話いただいたのは、ファルール株式会社代表取締役の田村さん。東ヨーロッパに貢献したいという強い信念のもと、東ヨーロッパエリアを中心としたワインや食品の輸出入ビジネスのサポートやコンサルティングをなさっています。
田村さん「ここ最近のルーマニアワインはカジュアルなワインのカテゴリでは、イタリアやフランスワインに負けない品質の良さを持っています。ぜひ日本のみなさんにも、普段の晩酌用ワインの候補に入れていただきたい産地です。」

良質なブドウが育つテロワールのアドバンテージ


ルーマニアでのワイン造りの歴史は非常に古く、6,000年前から生産されていたといわれています。共産主義時代には、一時世界のワインマーケットから姿を消したものの、古いワイン造りの歴史が語っているように、ルーマニアにはブドウ栽培に適したテロワールがあるそうです。
田村さん「ルーマニアはフランスと同緯度にあり、肥沃な土壌を持つ国です。昔から農業が盛んなことからも、ブドウ造りに適した場所であることが想像いただけるかと思います。」

ルーマニアの気候は温帯大陸性気候に分類され、四季があり、夏にはたっぷりと日差しが注ぎます。湿度は比較的低く、そして夏と冬、昼と夜とで気温差が激しい特性があります。これらの気候の特性はまさに良質なブドウが育つための好条件といえるのです。
さらに、水はけが良い丘陵地にブドウ畑が多くあることもポイントの一つだと言います。
秋のブカレストの市場ではブドウ果汁(モスト)が販売されている
このように、ワイン造りの古い歴史があり、さらに良質なブドウを造りだすテロワールのポテンシャルを持つルーマニアですが、まだまだフランスやイタリアワインのようには知られていません。世界的にあまり知られなかった理由についてもう少し詳しくお話することにしましょう。

価格と品質の高パフォーマンス!今が注目の時

田村さん「もともとワイン造りが盛んな国でしたが、第二次世界大戦後の共産主義時代に農地もワイナリーも国有化されてしまいました。その時に輸出用にワインを大量生産することが重視されたため、ワイン産業は落ち込んでしまったのです。」
さらに、西欧との交流が途絶えたことで、ワインの国際市場からも姿を消すことになったのだといいます。
その後、ルーマニアのワイン産業が再び熱を帯びたのは、1989年の民主化後のこと。時間をかけてブドウ畑が民間所有されるようになり、さらに2007年のEU加盟によって、ルーマニアワインの品質はさらに加速して向上していきます。
最先端の設備が導入されているブドゥレアスカワイナリー
田村さん「この20年ほどで少量でも良いワインを造ろうと考えるブティックワイナリーが増え、国外から技術を取り入れる姿勢も高まっています。そしてここ数年は驚くほど良質なワインが安定的に造られるようになりました。」
今まさに、品質と価格のパフォーマンスが非常に高い格好のタイミングだとされるルーマニアワイン。日本ではどのくらいの価格帯で楽しむことができるのでしょうか。
田村さん「日本で流通しているルーマニアワインは税抜きで1,500〜5,000円ほど。ボリュームゾーンは2,000円前後です。この価格でこの品質を楽しめるのは素晴らしいと思います。」

知っておきたい!世界が評価する土着品種


では実際、どのような品種のワインが飲めるのか、2019年のデータをもとにルーマニアでの栽培量が多い順に紹介していきましょう。赤ワインでは、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、フェテアスカ・ネアグラ。白ワインだと、フェテアスカ・レガーラ、フェテアスカ・アルバ、リースリングです。
国際品種の中に、あまり聴き馴染みのない品種が混ざっているのが分かりますが、ルーマニアでは土着品種が種類、量ともに多く栽培されているのだそうです。

特に、「黒い乙女」という名を持つ黒ブドウ、フェテアスカ・ネアグラはミディアムからフルボディまで幅広い味わいのワインを造ることができ、また、長期保存可能なワインも造れることから世界でも注目されている品種です。

その他にも、栽培面積がもっとも広く、しっかりとした骨格とグレープフルーツや白胡椒の味わいが特徴のフェテアスカ・レガーラなど、100種類以上の土着品種があるといわれています。
日本でも国際品種のルーマニアワインはもちろん、土着品種のワインも流通しているそうなので、ぜひ試してみたいですね。
ということで!田村さんに日本で購入できるおすすめの4本を紹介してもらいましょう。先ほど紹介した土着品種のワインもあるのでチェックしてみてくださいね。
田村さん「今から紹介するものはすべて2,000円以下で楽しめるものばかりです。ぜひルーマニアワインの実力を体感してみてくださいね。」

家飲みワインの候補にどうぞ!おすすめ4本

ムンテニア地方のデアル・マーレ産地にあるブドゥレアスカワイナリー
田村さん「この4本はすべてブドゥレアスカワイナリーのものです。初めて飲んだ時にここまでの品質のものが現れたかと感動し、すぐに現地に視察にいきました。ルーマニアでもトップクラスの品質を誇るワイナリーだと思います。」
まずは、ルーマニアワインのコストパフォーマンスの良さを感じていただける1本から。

■ヴァイン・イン・フレイム シャルドネ


田村さん「2,000円以内でこのシャルドネが飲めるのかと驚きを覚えた1本です。」
ルーマニアオークで4ヶ月熟成させており、しっかりとした樽感と力強いトロピカルフルーツの香りにバニラのニュアンス、厚みのある果実味と心地よい酸が特徴のシャルドネ。
田村さん「年々進化しており、ヴィンテージによって造り方の方向性が変わるところも面白いところ。その年によって醸造家がベストな方法を探った味わいを楽しんでいただけたらと思います。」

■ブドゥレアスカ プレミアム タマイオアサ・ロマネアスカ


古代ギリシャにルーツをもち、ルーマニアで2,000年ほど前から栽培されているという土着品種タマイオアサ・ロマネアスカからつくられる、アロマティックながらも辛口の白ワイン。
田村さん「マスカットのような華やかな香りがありつつもしっかりとした辛口で、食前酒からメイン料理とのペアリングまで万能に活躍してくれる1本です。和食全般とも相性が良く、毎日飲んでも飲み飽きないワインです。」
酸がとてもキレイなため、白身魚や白カビのチーズ、レモンを絞るような料理との相性は抜群です。

■ヴァイン・イン・フレイム ピノノワール


田村さん「フランスのカジュアルなピノ・ノワールを好む方にも自信を持っておすすめしたい1本です。」
ラズベリーやチェリーの香りに、黒コショウにバニラのニュアンス、酸は心地よく、ブラックチェリーの果実味にまろやかなタンニンが感じられます。
田村さん「収穫年から3~4年熟成させるとまろやかになってより魅力が増すだろうとワクワクしています。」
こちらも2,000円以内で購入できるそう。毎日飲んでもお財布に優しい高品質なピノノワールは魅力的ですよね。

■ブドゥレアスカ プレミアム フェテアスカ・ネアグラ


ルーマニアの土着品種フェテアスカ・ネアグラで造られたフルボディの赤ワイン。果実味とスパイシーさを合わせ持っていて、スパイス系の料理やラムとの相性が良いワインです。
田村さん「ルーマニアの土着品種は比較的どっしりと重厚感ある味わいのものが多いのですが、その代表的なワインだと思います。日本食だと焼肉にピッタリです。」
また、ファルール株式会社のオンラインショップでは、こちらの4本に前編でご紹介いただいたブルガリアワイン2本を合わせたワインセットを販売されています。気になる方はそちらもぜひチェックしてみてくださいね。

進化が著しいルーマニアワインを楽しもう


国際市場で再び注目されるようになってまだ間もないルーマニアワイン。
田村さん「国際市場に認められるワインにするために、ルーマニアの各ワイナリーは強い情熱と素晴らしい吸収力を持ってワイン造りに励んできました。品質を上げるために良い方法があれば柔軟に素早く取り入れていく姿勢を見ていると、今後ますます成長していくことは間違いないと思います。」

躍進を続けるルーマニアワイン。国際品種で実力を見てみるのもよし、土着品種で味わいの広がりを楽しんでみてもよし、手頃な価格帯である今のうちに、まずは1本試しておきたいですね。
『ファルール株式会社』では、輸出入ビジネスのサポートやコンサルティングだけでなく、ワインの勉強会も開催しているそうなので、興味のある方はホームページをチェックしてくださいね。また、現在は白樺の木2万本に1個の割合で見つかるという希少価値の高いきのこで作ったお茶『チャーガ』のクラウドファンディングも実施中。興味がある方はぜひ!

前編:家飲みワインのホープ!今こそ注目しておきたいブルガリアワイン

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