出荷量はすでにチリと競うほど。世界が注目する南アフリカワイン

ポール・クルーヴァー
チリ、カリフォルニア、オーストラリアなどで知られる新世界の中でも近年グングンと盛り上がりを見せているのが南アフリカワイン。「南アフリカワインの歴史は古く350年以上前に始まりましたが、南アフリカでは1994年までアパルトヘイトが実施されていました。ワイン産業が急成長を始めたのはその後で、まだわずか30年ほど。今まさに勢いがある産地です。」と麦島さん。世界の名だたるワイン評論家から高い評価を得、ヨーロッパではすでに広く飲まれている南アフリカワインですが、日本での流通量はまだまだ多くありません。飲んでみたいけどまずはどのワインから試せばいいのか…。
南アフリカ・ワインスペシャリストに認定され表彰される麦島さん
そこで、南アフリカ共和国大使館WOSA認定南アフリカワインスペシャリストであり、南アフリカにも何度も足を運ばれ、お店には日本最大規模の450以上の南アフリカワインを揃えているという麦島さんに、初めて飲む方におすすめの南アフリカワインを3つの価格帯に分けて教えてもらいました。
おすすめワインの紹介に行く前に、もう少しだけ南アフリカワインの魅力を見ていくことにしましょう。

多彩な味わいでいつまでもワクワクさせてくれる南アフリカワイン

スターク・コンデ・ワインズ
南アフリカと言うと、高温で日照時間も長いイメージがあり、そんな暑いところで高品質なワインを作れるのだろうか?と考える方もいるかもしれません。確かに南アフリカ共和国の大部分はそうなのですが、多くのワインが生産される、喜望峰やケープタウンもある西ケープ州は違います。アフリカ大陸の最南端に位置するため、南極にも近く、比較的冷涼で四季もあり、ブドウ栽培に適した気候であることに加え、土壌にも恵まれた地域なのです。「南アフリカはブドウ畑の場所によって土壌や気候や地形が大きく違います。そのため、ワイナリーよって個性が違い、実にバラエティ豊かな味わいを楽しませてくれる。フランスワインに限りなく近いエレガントな味わいのものから、新世界らしい果実味あふれるものまで、私たちを飽きさせません。」

新しい試みに挑戦する生産者たち。更なる発展に期待

以前はわずか200ほどだったワイナリーが今では900以上に増えているという南アフリカ。「土壌や気候が生み出すバラエティの豊かさだけでなく、ブティックワイナリーのような小規模から中規模なワイナリーが多いのも南アフリカの特徴です。丁寧に丹精込めて造っているからこそ、お手頃な価格でも高い品質のワインが生まれている。そして新しい挑戦に熱意を注ぐ若い醸造家もたくさんいます。海外からの投資も集まっており、ブドウ畑を持たずに、ブドウを買い付ける生産者が多く、チャレンジしやすいという背景もその理由の一つでしょう。今後の更なる進化に目が離せません。」

確かな品質のほかに、取り組みにも注目

畑に放し飼いにされるアヒルたち
南アフリカのワイン造りはSDGsの面でも世界から称賛されています。「産地であるケープ地方の約95%のワイナリーが自然保護区の中にあります。そのため、防カビ剤や防虫剤、除草剤をほとんど使わないブドウ造りがなされており、肥料にも有機鶏糞などが使用されています。環境を守りながら栽培を行う、その姿勢も注目すべきポイントだと思います。」  

これらの魅力を持ったワインたちがお手頃な価格帯であるというのですから、それは飲んでみずにはいられないですよね。「南アフリカワインの中心価格帯は2,000〜7,000円台。もちろん1,000円台にも高品質なものがあり、総じてコストパフォーマンスが良いと言えます。今回は3つの価格帯でワインを紹介していますが、楽しみ方にも特徴がありますので、自分にしっくりとくる1本を見つけてみてくださいね。」

まずは1,000円台

毎日の晩酌にぴったり!バランスの取れた万能ワイン

「ここでピックアップした3本はどれも口当たりが優しく、バランスの良さを感じるワイン。どんな料理にも合わせやすいので、晩酌用にストックしておくと良いですよ。」

ステラー・ランニングダックオーガニック&酸化防止剤無添加 ピノタージュ 2020

通常販売価格1,300円(税込/記事公開時点価格)

ステラー・ランニングダックオーガニック&酸化防止剤無添加・シャルドネ2021

通常販売価格1,300円(税込/記事公開時点価格)
オーガニックワインの生産者として数々のメダルを受賞しているステラー・ワイナリーから2つの品種をピックアップ。「約2,000羽のアヒルが畑の害虫を食べてくれ、そして彼らの糞が肥料となり、肥沃な土壌を作り上げる。サステイナブルな取り組みに定評があるワイナリーです。また労働者に対して適正な利益がもたらせるような仕組みを設けている点も注目したいところです。」ピノタージュはイタリアの新酒“ノヴェッロ”を彷彿させる果実味が特徴で、少し冷やしてから飲みたい1本。シャルドネは、あんずのジャムのような果実味と蜂蜜の風味が感じられ、長い余韻が楽しめます。「高品質な上にお買い得な2本です。」

ロバートソン カベルネ・ソーヴィニョン 2019

通常販売価格1,300円(税込/記事公開時点価格)
世界50カ国に出荷しており、南アフリカで3番目に大きなロバートソンワイナリー。「このカベルネは南半球らしい果実味を持ちながら、しっかりとした酸味があり、上品な仕上がりになっています。バランスが取れていて、とにかく飲み疲れしない1本です。」

続いて2,000円台のおすすめ

品種の違いを楽しもう。品種の特徴を強く感じられる3本

「南アフリカワインの魅力のひとつである、バラエティに富んだ味わいを実感できる3本です。南アフリカの主要品種であるシュナン・ブランや、固有品種のピノタージュをはじめ、品種の個性を感じてみてください。自分の好みの品種を見つけたい方にもおすすめのラインナップです。」

ロングリッジ オーガニック シュナン・ブラン 2019

通常販売価格2,365円(税込/記事公開時点価格)
比較的強く、やや塩味を感じさせる酸が特徴で、あんずのようなフレッシュな果実味としっかりとした骨格のあるワイン。「ビオロジック農法にこだわるロングリッジワイナリーのシュナン・ブランで、特に素晴らしいヴィンテージがこの2019年。南アフリカの代表品種の味わいを存分に味わってみてくださいね。」

ブラハム ピノタージュ 2015

通常販売価格2,260円(税込/記事公開時点価格)
南アフリカで大変著名な女性醸造家が手がけるワイナリー、ドメイン・ブラハム・ワイナリーのピノタージュ。麦島さんは2018年にワイナリーへ訪問し、現地で収穫体験もされたそうです。「ピノタージュは、ピノ・ノワール種とサンソー種の交配種で、南アフリカ固有の品種です。こちらは凝縮感のあるジャミーな果実味とスパイスの風味、樽熟成が織りなす風味が豊かに広がる1本です。」
南アフリカワインの特徴的な品種なので、ぜひ一度は飲んでおきたいですね。

レインボーズ・エンド・メルロ 2018

通常販売価格2,750円(税込/記事公開時点価格)
「私が心底惚れ込んだワインで、日本に広めたい一心で輸入することにしました。現在当店でしか取扱いがありません。」と麦島さん。今でもヒョウが出ると言われるほど山深いところにあり、兄弟2人で切り盛りする小規模なワイナリーで、すべて手作業で丁寧に造られています。「メルロらしい膨らみのある味わいを楽しんでくださいね。」

最後は4,000円〜6,000円台

じっくりと味わいたい。南アフリカワインのトップクラス

「品質が非常に優れた3本です。価格帯的にも南アフリカワインの上位クラスに入ります。時間をかけてじっくりと味わっていただきたい名品です。贈り物にもおすすめですよ。」

ステレンラスト アーティソンズ マザーシップ シュナン・ブラン 2019

通常販売価格4,345円(税込/記事公開時点価格)
若い兄弟2人が運営する老舗ワイナリー、ステレンラスト。ロンドンオリンピックのオリンピックワインに選出されたことでも有名なワイナリーです。「樹齢の長い樹から採れる良質なブドウを使っています。シュナン・ブランを得意とする彼らですが、その総決算とも言える1本です。」

グレネリー レディー・メイ 2015

通常販売価格6,275円(税込/記事公開時点価格)
ボルドーの名門、ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドのオーナーであったメイ・エレーヌ・ドゥ・ランクザン夫人が南アフリカに一族ごと移住し、造りあげたワイナリーの名品。「ワイナリーが過去最高の仕上がりだと自信を持って送り出したヴィンテージです。ボルドーブレンドの本格的な赤ワインをゆっくり味わってほしいですね。」

ハーテンバーグ エレノア シャルドネ 2017

通常販売価格4,635円(税込/記事公開時点価格)
南アフリカを代表する老舗かつプレミアム・ワインの生産者が贈るシャルドネ品種。「強くハッキリとした酸、一本筋の通った骨格、そして長い余韻。熟成させることで更に魅力的になりそうな、特別な日の乾杯のために寝かしておきたい1本です。」

まとめ

試してみたい南アフリカワインは見つかりましたか?まずは自宅用に楽しんでみて、気に入ったらハイクラスなものを大切な人へのプレゼントにしてもいいかもしれません。もし南アフリカワインの魅力に取り憑かれたら、麦島さんのお店『ワインブティックヴァンヴァン』では、南アフリカワインのセット販売も行っているので、そちらもチェックしてみてくださいね。

前編:ソムリエ麦ちゃんが教える“コスパの良いワインに出会うコツ”とは?

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