初心者でもしっかり分かる!ドイツワインの選び方と楽しみ方
前編では、ドイツワインの今と魅力について改めて紐解いてきましたが、その続きとなる今回はずばり実践編。ドイツワインを楽しむためのイロハについて、引き続き『銀座ワイナックス』の山本さん、星野さんにお話を伺いました。好みのドイツワインを選び出すためのポイントや、味わい別に楽しみ方のご紹介をいただいたので、お楽しみに!
初心者には選び方が少し難しいドイツワイン
有名な甘口ワインだけでなく、辛口、そして最近では白ワインだけでなく赤ワインも楽しめるようになってきたドイツワイン。さらに和食と相性が良いというのですから、飲んでみたい気持ちが高まりますよね。ではさっそく、自分好みのワインを選んで今日の夕飯と楽しんでみませんか?
と言いたいところですが、実はドイツワインは他の国のワインと違って選び方が少し難しいそうなんです。その理由の一つに、独特な品種の呼び方や表記方法があるからだそうです。
星野さん「例えば、ドイツの代表品種であるピノノワールはドイツではシュペートブルグンダーと言います。そしてボトルにもシュペートブルグンダー(SPÄTBURGUNDER)と表記されることがほとんど。ドイツワインに慣れていないと、ちょっと分かりづらいんです。」
シュペートブルグンダー S / ノイス / エチケット中段に「SPÄTBURGUNDER」の表記
なるほど、自分好みのワインを選び出すには少しコツがいるようです。ということで、ドイツワインセミナーの講師も務める山本さんに、初心者でも分かりやすいよう、ここだけは押さえておきたいポイントを教えてもらいました。
これを知っておくとワイン選びがスムーズに
山本さん「ドイツワインは法律でかなり細かく、そして複雑にルールが決められていて、詳しくお話しすると専門的な内容になってしまいます。なので今回は、食事に合わせて飲みたい辛口系のものなのか、気分を満たしてくれるような甘口系ワインなのか、この2つのタイプをみなさんが選んでいただけるよう、できる限りポイントを絞ってお伝えしますね。」
◆晩酌用にぴったりな中辛〜辛口ワインを見つけるなら
山本さん「辛口からやや辛口、中辛あたりの味わいを選ぶのに覚えておきたいキーワードをお伝えします。これらの表記がエチケットにあるものを選んでいただければ、食事と一緒に楽しめるようなワインです。」
①Trocken(トロッケン)
残糖度が9g/l以下のもの。辛口ワイン。
ソーヴィニヨン・ブラン S / シュターツヴァイングート ヴァインスベルク / エチケット下部に辛口を意味する「TROCKEN」の表記
②Halbtrocken(ハルプトロッケン)
Halbは英語のhalfを意味し、トロッケンの半分、つまり中辛口という意味。残糖度が18g/l以下のもの。
グラーフ・ナイペルク トロリンガー / エチケット下部に中辛を意味する「HALBTROCKEN」の表記
山本さん「Trocken(トロッケン)やHalbtrocken(ハルプトロッケン)は糖度と酸の割合がドイツワイン法で規定されているため、これらの表記があれば辛口系のワインだと思っていただいて大丈夫です。アルコール度数も大体12〜3度前後です。」
③Feinherb(ファインヘルプ)
「洗練された辛口」という意味で、やや辛口〜やや甘口の味わい。英語のoff dryに相当する。
カルフェルツ リースリング / エチケット下部に「feinherb」の表記
山本さん「①や②と違ってドイツワイン法で規定を設けたものではなく、造り手が自由につけられる表記です。この表記があるものも食事と一緒に楽しめるタイプのワイン。アルコール度数は11〜12度ぐらいです。」
また、ボトルの形状から判断できるものもあるそうです。
④フランケンワイン
ボックスボイテル〈山羊の陰嚢(いんのう)〉と呼ばれる独特のフォルムをしたフランケン地方のワイン。
ヴュルツブルガー シュタイン ゲヴュルツトラミナ―
山本さん「日本で流通しているフランケンワインには辛口が多いです。デザートワインも稀にありますが輸入量が少ないため、このボトルの形状であれば辛口系のワインを見つけやすくなります。」
星野さん「ちょっと余談ですが、フランケンボトルのように、産地によって個性的な形をしたボトルがあるのもドイツワインのおもしろいところ。コレクションするのも楽しいですよ。」
ライン地方やモーゼル地方で使われるボトル。ライン地方では茶色(右)、モーゼル地方では緑色(左)のボトルが使用されることが多い。
◆ワイン単体でじっくり甘い味わいを楽しむなら
山本さん「基本的には、辛口系を意味するTrocken(トロッケン)、Halbtrocken(ハルプトロッケン)、Feinherb(ファインヘルプ)の表記がなく、さらにアルコール度数が低いものであれば、甘口の可能性が高いです。さらに“遅摘み”や“房選り”という表記も甘口ワインを見抜くひとつのポイントです。」
①Spätlese(シュぺートレーゼ)
「遅摘み」という意味を持つ。通常の収穫期よりも遅くまで待ち、完熟した状態で収穫したブドウを使ったワイン。
ウンクシュタイン ショイレーベ / プフェッフィンゲン / エチケット下部に「SPÄTLESE」の表記
山本さん「Spätlese(シュぺートレーゼ)という表記があり、かつアルコール度数が7.5%前後と低いものは甘口の味わいが多いです。」
②Auslese(アウスレーゼ)
「房選り」という意味を持つ。シュペートレーゼよりさらに糖度の高い、完熟しているか、貴腐がついたブドウを使ったワイン。
エールベルク リースリング アウスレーゼ / エチケット中段に「Auslese」の表記
山本さん「意外かもしれませんが、甘口ワインはスパイシーなエスニック料理に合います。でも、等級が上のものは、ワイン単体でじっくり楽しんでいただくのがおすすめ。辛口系のワインを食事と一緒に楽しんだあと、もうちょっと飲みたいなぁという時に甘口ワインでまったりしてもらうと非常に贅沢な気分になれます。あとはお酒をガッツリ飲みたくないけれど、でもやっぱり一口だけワインが飲みたい…そんな時にも良いですね。アルコールが重たく残ることなく、一口だけでもホッとリラックスさせてくれますよ。」
星野さん「甘口ワインは糖度が高いので長持ちします。開けてから2〜4週間ほどもつので、冷蔵庫やワインセラーに1本置いておくのがオススメです。私は今、子育て真っ最中なのですが、どっと疲れた一日の終わりに甘口ワインを少しだけ飲んでリフレッシュするのが至福の時。アルコール度数がそれほど高くないので酔いが回らず、気分を満たしてくれるんです。」
店内での試飲の様子
また「銀座ワイナックス」では試飲ワインが常に数本用意されているそうなので、エチケットを見るだけでなく、実際に味わいを確かめることもできます。お近くの方はお店に足を運んでみて下さい。
試してみたい和食とドイツワインの組み合わせ
さて、ここまでドイツワインの選び方のコツや、楽しみ方を紹介していただきましたが、もうひとつ、ドイツワインの楽しみ方で外せないのが和食とのペアリングです。豊かなミネラルと繊細な味わいを持つドイツワインは和食との相性がいいと言われていますが、どの食材にどのようなワインを合わせたらいいのでしょうか。星野さんおすすめのペアリングを教えていただきました。
◆おすすめペアリング1 / 唐揚げ×中辛のリースリング
星野さん「酸がしっかりしたリースリングはジューシーな唐揚げにぴったり。唐揚げにレモンを絞るのと似た感覚で、後味がさっぱりとしますよ。」
◆おすすめペアリング2 / すき焼き×ピノノワール
星野さん「濃くて甘みのある割り下と少し残糖のある少辛口のピノノワールがよく合います。」
◆おすすめペアリング3 / ウニのお寿司×ゲヴュルツトラミナー
星野さん「ウニのような濃厚なネタに合わせるなら、スパイシーでライチや野バラのような独特のアロマを持つゲヴュルツトラミナーという品種がおすすめです。」
お寿司はネタによって味わいが変わるため、それぞれに合わせたいワインが違ってくるそうです。『銀座ワイナックス』ではそのペアリングを実際に体験してもらえるイベントを定期的に開催しています。
星野さん「会員の方向けに 20年以上も前から続いている“楽飲会”という名前のイベントなのですが、毎回20〜30名ほどのお客さまと料亭やレストランに行き、和食とドイツワインのペアリングを楽しんでいただいています。その中で特に人気なのがお寿司の会。お魚の味わいによってワインを変えていくので、ネタそれぞれに合った最高のマリアージュを楽しんでいただけますよ。」
過去の楽飲会のペアリング
この寿司とドイツワインのペアリングを楽しむ会は、ドイツにある日本大使館でも開催したことがあるそうです。そのほかにも鶏料理とワインを楽しむ会など、いろいろなテーマがあるそうなので興味のある方はお店のホームページをチェックしてみてくださいね。
ドイツにある日本大使館での寿司の会の様子
ドイツワインを楽しんでみませんか?
いかがでしたか?食事と合わせるもよし、リラックスしたい時に飲むのもよしのドイツワイン。ぜひこの記事を参考に飲みたいシーンに合ったワインを選んでみてくださいね。
辛口系のワインなら、星野さんおすすめのペアリングを試してみるのもいいですね。さて、次回の記事ではドイツワインの魅力を実感できるイチオシの8本を山本さん、星野さんにピックアップしていただきましたので、そちらもチェックしてみてくださいね。2月下旬公開予定です。
前編:甘口派も辛口派も見逃せない。ドイツワインの今、そして魅力を徹底的に解説します
後編:ドイツワインを堪能しましょう。ドイツワイン一筋35年のプロがおすすめする8本
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